マンガネタ202011

やはり、ジョニー・ライデンの帰還的な ノリがええな(※漫画は入手できていない) ほしいものは経緯の状況である。 英雄はいらない。

設定

パシフィック・リムカイジュウがちまちまやって来るんじゃなくて一気に戦線を組めるぐらい地面から湧いて出てきた場合を考えたい。 除草剤も病気も効かない、恒星間大航海時代に開拓植民地の治安維持部隊しかいないサプライチェーンが貧弱な世界でカイジュウがワラワラ湧いてくる。

ついでに腐海みたいな付属生態系までセットで湧いて出てきて、巨大カイジュウが先陣を切って侵略して来るんだけど、それ単体だと砲兵等で始末は付けられるんだけど、費用がかかりすぎてて辛いと。 マイクロドローンで近接地雷の適用を試みるも付属生態系の虫によって無効化される。

この侵略生態系はハビタブルゾーンに存在する、同じレベルの種族を一掃する戦略を持っており 事実上の戦線構築をしてローラー作戦を仕掛けてくる。 動くもの、特殊な敵味方識別手段をパスしないものを植物を含め駆逐する 一部には抗体のように主敵を選別し駆除する系も存在する。

地上に見えない網の目のような菌糸体を広げて太陽光を摂取し、 地下で巨体を作り上げて突如出現するカイジュウ、 主に初期の競争相手が少ない乾燥地に多く、地下水脈を掘り当てて侵攻体制を整えてから一気に畳み込む 実際のコンフリクトが発生して障害となる存在への再最適化を実施する。

カイジュウ達は方舟と呼ばれる播種船状の種に入って星間移動してくる。 自転軸に対して一周する常に太陽光エネルギーが途切れない日の沈まないエリア、大陸一つを制覇するような状況になれるまでは衛星軌道上に播種コンテナを打ち上げないが、全球制覇すると軌道エレベータを構築し方舟をバラ撒く。

ある程度橋頭堡確保をすると方舟を打ち上げ能力を確保 第二戦線を開くべく、大型の飛行虫で構成された偵察部隊の報告(光学発信とフェロモン)により、軌道周回上から別の大陸の砂漠へ方舟を打ち込む。 ただし、カイジュウの体の構築には時間がかかる上に地下水脈を絶たれると崩壊するのだ


そして出会う。

そんな存在とテラフォーミングが完了した植民地惑星を人類との取り合いが発生する。 勿論、人類側はさあ、フロンティアで好きなこと出来まっせと恒星世界各地から食い詰め者が集まる西部劇さながらの土地に カイジュウとその眷属が出現する。 当然、対抗して戦闘が始まるのだが、カイジュウ側が有利に戦況はすすんでいく。

そう、人類側にそう対抗手段が無かったのである。

致命的だったのは、アカデミーの研究職の予算不足と初期の侮りだった。 多くの犠牲をだして負け、2個の大陸が陥落した後、それも第5戦線が発生した時に方舟の存在が証拠によって確認された。 すでに戦費で植民地政府は赤字状態であり、ここでやっとこれ以上の戦線が発生した場合には破綻が待っているということが政府首脳陣の共通認識になった。

近代科学をもってしてもこの苦戦はカイジュウのサイズが問題なのだ。既存の対人間用兵器群とはあまりにも咬み合わないサイズ、人類であれば兵器運用など考えもしない突拍子もないサイズと侮れない運動性能、そして火砲にも耐えうる装甲がそろっていたのだった。 また飛行虫もサイズが厄介な上に数が多い。 まるで虫のように湧いて出てくるし、飛行性能がファンネルの様に高く、体当たり用の角とレーザー兵器を搭載している。 安いミサイルだとまず当たらない。 近接信管ではあまり効果がなく、焼夷弾でようやく殺せるという有様。

カイジュウを育む彼らは彼らなりに人類のような恒星間移住文明との交戦経験が有るらしく、 軌道上での脅威排除機構や恒星間移動時のカモフラージュ能力などが高く、それ故、最初の方舟の着弾を見逃してしまったのだ。

圧倒的な攻勢の前に正規戦正面装備で劣る植民地惑星軍は敗退を重ねる。確かに兵器工場はドンドン建設され、兵器は生産されたが運用が不味かった。

既に効果が微妙な兵器が大量生産され、試作品の山からは希望が出てきそうには無かった。 唯一、戦場の女神、砲兵火力だけは絨毯砲撃により彼らの進撃を遅滞させる事が出来た。 が、常に放り込まれるエネルギー効率は推して知るべし。戦線を迂回され、徐々に押し込まれつつあった。


現地政府の事情

移民惑星とは、そこに降り立った者達は既に帰る場所もない裸一貫の移民が大半であり、人権条約で有用性が保証されたお客の候補なのである。 彼らにはここで開発をしてもらい、金を稼いで借金を返してもらわねばならない。 その借金取り、出資者からの圧力はこのカイジュウ騒ぎ以前までは天命の理と言わんばかりに存在したが、カイジュウが湧く件が伝わると産業に使えないか皮算用を始めたと思うと、現地政府の負けがこんでくるに従い鳴りを潜めてしまった。

この混乱、政府への信用失墜は一部の人買いが降り立ち問題視されたが実の所、恒星間世界にはまだまだ魅力的な未開の惑星は存在しておりこの惑星にこだわる理由は希薄だった。 数有る失敗案件の一つと格付けされると一気に大口出資会社の回収熱は冷めてしまった。 追加融資はしないし、ただ見かけだけは派手だったので賭博の見世物になっていくのであった。

一方星間統治機構「同盟」は違った。

この伝染病とも言えるカイジュウの方舟を星間伝播させないように封鎖する事に決定した。 とは言っても方舟は超光速移動が可能な訳では無いので監視所を設けるだけであったが、 同時に今までの野放図な移動に制約がかかる事でもあった。 何処かの道楽金持ちが方舟を密輸しない保証は無いのだ。

サンプルからカイジュウのDNA相当を確認した所、地球型生物を駆逐する存在、より上位の高効率型生物と判明した。 同じ環境に地球型生物と彼らを競合させても地球型生物には勝ち目がないエネルギー効率なのだ。 そのため、急遽厳重に検疫が成される事態となった。 当然各種違法薬物や武器の密輸などのが通過できず、一気に星系は資産価値を減じてしまった。

この情況では結局、人権を持った人間は貴重なので移住の意志がある人間に関しては即座に移動しないとと言う資産家が居る一方、 星間移動はDNAクレンジング費用がかかると言うお達しが出る。

DNAクレンジングとは汚染地域に居た人間を解体の上、該当生物を含まないよう分子レベルで消毒をされて再構成されるのだ。 勿論、この高価な費用を誰が持つのかで揉め始めた。


人権の価値は

恒星間超光速移動が有人で可能になった時代、技術力はいったん人間の価値を貶めてしまった。

人間は不老不死を獲得し、意識の移植さえも出来、粘土のようにエネルギーから人体をプリントアウトすることさえ出来た。 その上で、何が人権を保証するのかが重要なのだった。 それは、人工的に生まれた場合は後見人が居なければならず、教育の義務が課せられる、その義務履行だった。

勿論、勝手にポコポコ人間を作る馬鹿は後を絶たず、 成人時点で人語を話せて教育を受けていれば人権が保証されるし、 もし、そうでなければ後見人が居なければ人権は保証されない事になる。 逆手に取る馬鹿が当然出てくるので、結局しばらく悲惨な事件をそれなりの数記録を積み上げて、境遇に満足しない、自由意志を表明できるまで緩くなる。

皆思うわけである、わざわざ人間を以て何かをさせるのが間違っているのであって、同じことをさせるなら機械にさせればいいのだと。 が、人間という原種を保護するインセンティブだった。 実際の所、人権を保持しない意思決定機関は法人と言う形で存在しており、超人的能力を以て人権を持つ人間を雇って好き勝手させていた。

人権がことさら重要になってしまったのは機械による暴走で一星系を壊滅に持ち込んだ事件があった事が大きかった。 あの事件以降、自己増殖する機械に強大なパワーを持たせることは星系を丸まま殲滅させられると同義になった。

あの事件では恒星間統治機構「同盟」はありったけの軍を動員し、反物質爆弾で惑星表面を焼き上げた後、 惑星を減速、そのまま主星へ衝突処分としたのであった。 もちろん、元あった場所から重力源が消滅したので星系の惑星軌道は撹乱を始め、居住惑星どころか他の惑星も開発可能期間が大幅に短くなるなど、星系は恒星エネルギー源以外に資産価値をほぼ失って甚大な被害を与えて投資会社を震え上がらせた。

あの事件の星系に居る人間の惨状を以て人類は上位知性の苗床に過ぎないを再確認した以上、機械任せは禁忌となったのであった。 其の結果、星間条約には 機械兵器を運用するからには兵権を握る存在=人権を持つ者が最終決定権を持つ、と証明がされない場合は、兵権を持つ機械が恒星間進出能力を獲得する前に星系ごと反物質爆弾で焼き尽くすという野蛮な解決方法が定められた。

そう、シンギュラリティ自体は既に過去のものとなって久しい。 だが、結局ロボット3原則は形を変えたものの生きているのだった。

少しでもいい、人間が主人公の世界を存続させるために。


恒星間移動

恒星間世界とは言え、まだ艦船に搭載可能なワープゲート、ゲート自身が生成する空間で自身が通過できるものは存在せず恒星間移動は恒星エネルギーをふんだんに使ったワープゲート単位で行う必要があった。 それでも、光速の数割までの速度で人類圏の拡張は続いていた。

そうして数百年、ワープゲートの設置により、ほぼ太陽系内にすべての星系の居住惑星がひしめくような雑多なネットワーク空間が形成されたが、同時に大小の戦争も繰り返していた。 一方で拡張は永遠のフロンティアを提供し、ゲートの向こう側は法があるようでない中世もかくやの世界が広がっていた。

一応、深宇宙探査船、それもかなり高価で大型なものは、使い捨てゲートを使うことで未開拓星系への光速突破航行がはできなくはなかった。 が高価すぎて、惑星を確保できるほどの価値を生む場合にのみ主に使われるのであった。 星系の領有は最初のゲートの開設によりほぼ決定づけられ、それが開拓の大きな原動力にもなっていた。


防衛戦

さて件の惑星である。 ここには日本を祖とすると自称する新興宗教団体がゲートを開設して占有権を獲得した星系である。 惑星自体はありふれた物で、すでに全人類の人口自体が惑星の居住面積に対して地球の石器時代以上に希薄になりつつある時代であったので、ここも人口は西部劇以上に希薄だった。 通常、人口を増やすべく人体錬成をするのだがその金もなく、自然人口増加に任せるよりしかたなかった。

しかし、情報の統制は日本をお手本としているのか無かったため、めぼしい能力が有っても恒星世界の栄える中央の大学に行きたい等と言って抜けていく、過疎の問題は付きまとうのであった。 一応、自由主義ではなく新興宗教の理想とする日本を構築すべく独自色を出すのだが、それは逆に新世代には不評であった。

新興宗教団体が持ってきた惑星開発の持参金はゲート開設とテラフォーミングにほぼ費やされ、あまりの貧乏さに恒星間移動をした先で開拓は人力で行う有様だった。 それでも腐っても星系主なので、一応資源の切り売りなどで収入はある、しかし大規模なイケてる開発にはなかなか手が付けられないのであった。

そんなこんなで70年ほどたったある日、カイジュウに見舞われる。悲劇である。

この時点で惑星開拓政府には選択肢はあまりなかった。

  • 戦艦を建造したいが工業力がない
  • 強力な戦艦は購入したいが資金がない
  • 仮に購入できてもメンテナンス費用を払えない
  • 発注を今からしても間に合うか分からない
  • 宇宙海賊等の外部勢力を抱き込むのは自殺行為

という状況であった。

仕方がないので、工業機械を転用したエネルギー兵器を使うがいかんせん、ユースケースが違うのでカイジュウに射程等挙動を学習され無効化されてしまう。 窮地に立った現地政府は死にものぐるいで、火砲兵器軍を急造しなんとか押し込まれながらも費用対効果で持続可能な戦線の構築に成功する。 それでも一瞬の火線の隙きを突かれて戦線はじわりじわり押し込まれていった。 特に砲撃の隙間をかいくぐって地中から坑道をすり抜けてくる連中の存在が厄介でどうするかのか論戦がおこったが もう、奴らへのまともな妨害構造物を作るには何もかもが不足していた。

結局、費用対効果上

  • 自律的に動いて
  • 自力でメンテナンスをして
  • ふんだんに有る太陽光電力で可動する
  • できれば資源を食わない

兵器が要求されたが、そうなるとマイクロマシンによる機械生物をAIに繋いだ代物が適当だと誰しもが思っていた。 しかしそれが制御不能になれば自動増殖する分手が付けられなくなり、惑星滅殺処分であったあの事件の再現が危惧された。

そして、戦況不利が濃厚になるのと同時に「同盟」より侵略生物の感染性から汚染地区からは「解体洗浄」をしなければ星系から出られない事態が議題に上がっている事が発表され、見切りをつけた住民の脱出が始まってしまう。

これは現地政府を大いに慌てさせた。


売り込み

そんな折、素っ頓狂な提案を行う人物が星系にやって来る。 なんでも、巨大人造人間を導入するといいと。 人造人間はしっかりと仮想空間で教育を施す人間故、星間条約では人権が保証されると。 ついでに、メンテナー「人間」も用意すると。彼らも人間であると。彼らのみでメンテナンスフリーで可動できると言うのである。

更に言うには

  • 「勿論、必要な物資等が有るけれども強力な消化能力で低品質でも問題なし。」
  • 「エネルギーさえ有れば火薬もなしに怪獣を解体できる」と
  • 「建造も船舶用ドックで1ヶ月もあれば建造できる」と
  • 「メンテナー人間も勝手に増殖する」と

このあまりにも魅力的な提案に政府は食いつかざる得ないのであった。


役人「ふむ。魅力的な話だが、これは少々我々人間の種族的尊厳に問題が有るのでは?」

売り込み人「しかし、こう言っちゃなんですが他に手がありますかねぇ」

役人「失礼な、まだ手は残っている。今新式の兵器を準備中だ」

売込「そうは言っても、数カ月後には「同盟」連合軍がゲートの先に検問を設けると聞いたら何人残りますかね」

役人「本当なのか?」

売込「まあ私は代理人なんでね。噂、ですよ。」

せわしなく電話をかける役人

役人「お目通りしてくださるそうだ。こっちだ。」


重厚な和室な執務室。 この惑星開拓政府にはトップに 自称「源氏の傍流」が居て、征夷大将軍を自称しているのだがなんのことはない、口の達者な歴史好きの実業家である。流石に天皇は許せなかったらしい。

将軍「成る程、一体ぐらいなら」

役人「しかしドックを数ヶ月専有は・・」

将軍「よい、コストじゃ、コストを言え」

売込「これを」スッ

将軍「ほう!こんなので出来るのか?」

売込「発案者の見立てでは、ですがね」

役人「しかし、倫理的な問題がありまして・・・」

細かい聞き入る将軍

将軍「人身御供を出せとな?」

売込「将軍様、外部の介入を招かず軍を整えようとするにはこれしかないですぜ?」

将軍「・・・」

売込「このプランの肝は人権なんでね」

将軍「あの事件か」

売込「星系主なら同盟はゲートの向こう側に集まりつつある、でお分かりのはず」

将軍「で、何人必要なのじゃ?」

役人「上様!?」

将軍「人権と言うからには命までは取らんのじゃろう?」

売込「勿論。ただし肉体は生まれ変わってもらいますがね」

役人「それでは・・」(命を差し出したのと同じではないか!?)

役人の方を見る売込

売込「まあ、まあ、これは兵器なんだぜ?それを人間に渡す。それもあの化物を駆逐できる奴をさ。寝ても醒めても武器と一緒の体。これをそのへんの人間に任せられるかい?」

役人「た、確かに。で反乱を起こさない保証は?」

売込「ない。自己決定権の保証は人権だろう?」

役人「上様、このプランは欠陥商品です!」(バカを言うな!)

将軍「軍法じゃ、軍法で裁けばよい」

役人「上様!」

売込「じゃあ、5人。5人志願者がいるな。」

役人「5人?!」(リソースが足りるのか!?)

将軍「反乱が3人以上でないと成功せぬ、か・・・」

役人「貴重なドックを5個同時に数ヶ月ですよ!」

将軍「負傷兵でも良いのだろう?」

売込「ええ、プランでは解体洗浄の上融合させますから。ただ一つ条件がありましてね」

将軍「なんだ?」

売込「これは俺もどうかとは思うんですがね、開発元の責任者がどうしても女性に限ると」

将軍「何か理由が有るのか?」

売込「なんでも見た目麗しい方が良いとか」

役人「なんと破廉恥な、人形なら何でも良いんじゃないのかね」

売込「データがそれしか無いと言ってるんで」

将軍「無いものは仕方がないな」

役人「上様!後で問題になっても知りませんぞ」

売込「で、どうなんですかね?おっとデモンストレーターの準備が整ったようです」

将軍「良いだろう、現物を見せてもらってからで」

役人「ふん、使い物になるのだろうね」


デモンストレーション

開拓政府首都の曇天にふわりと円形の穴が開いく。気がついた道行く人が見上げると・・・

「何だアレは?」

「人間が空から、まてあのサイズは人間じゃないぞ?」

「おい、人だ。手に宇宙服を着た人間が乗っているぞ」

「え?あの巨人じゃなくて」

「右手だ」

ざわつく中、巨人は上空20mほどで止まる。

手にはポーズを決めた宇宙服のデブ

燦然と輝く光の輪に、絢爛な衣装をまとった巨大な美女

美女「登場は優雅に決まったでしょうか」

デブ「十分さ」

見上げる将軍が感嘆の声を漏らす。

将軍「おお、女神よ。成る程な・・・」

役人「どうして浮いているのだ?」

売込「あのサイズだからね。レディの体重は5000トンらしい。 あんたは女神の足跡がほしかったかい?」


驚く人を見下ろしながら電話を取り出すデブ。

デブ「じゃあレディ、彼らにデモを見せてあげて」

美女「そうね、目標は?」

売り込みの電話に着信だ。

売込「すまん、聞きそびれてたわ。ああ待ってな。眼の前に最高責任者は居るからよ。」

「将軍、華麗にデモを見せられる場所はありませんかね?」

将軍「華麗に?」

売込「そう、女神が映える場所ですよ!」

役人「ふん!」


前線

「効力射が効かねぇデカイのが来るぞ!直射砲用意!」

後光に振り返る

「失礼!獲物を横取りさせていただくわ」

そう声が聞こえたと思うと 巨人が颯爽と前線を越えていく

そして槍を軽やかに振るうと、あの砲撃すら受け付けなかったカイジュウがまっぷたつに首を落とされていた。

「何だあれは」

本部「観測班に命ず、あの巨人の動きを注視、報告せよ」

前線「本部、了解。あの巨人は味方なのですか?」

本部「味方だ、君たちには危害はない。」

前線「本部、了解。観測を続けます。」

そんなやり取りをしているうちに、首を落とされたカイジュウとは別のカイジュウが3枚下ろしになっていた。

観測「すげぇ」


前線司令本部ではデブと将軍が司令部将校たちと並んでデモンストレーションを観戦していた。 驚きを隠せないざわつく司令部員を背景にして将軍に話しかけるデブ。

デブ「如何ですかな」

将軍「素晴らしい!これならあの憎きカイジュウ、いや害虫共をこの星から駆逐できる!」

デブ「うむ」

売込「ではご契約を」

将軍「じゃあ君、よろしく頼む。我らが理想のために」

役人「は、迅速に対応致します!」

半信半疑で嫌味たっぷりだった役人も現実を前にして手のひらを反す。


前線を押し上げるニュースに湧く背景、居酒屋

デブ「数が足らん」

売込「でもこれが限界だと」

デブ「奴らの繁殖力を舐めておる、他の大陸から増援が来たらもう耐えられないぞ」

売込「ってもう契約しちまったからなぁ」

デブ「まあいい。守備範囲が狭くなれば逆に守りやすくはなる」

売込「そんな事態になったらゲートが封鎖されちまう」

デブ「そうだな・・・仕方がないあれをやるか・・・」 「この予測を覆す要素はない」

売込「じゃあなんで売り込んだんだ?」

デブ「私の秘策、レディの継続的量産なら最終的には勝てる。時間はかかるがな。」

売込「そうか、でもそれじゃゲートは閉じられちまうな」

デブ「植民星系なんて今は何処でもあるからな。閉じても同盟は痛くも痒くも無いだろう。」

売込「あんたは残るのか?」

デブ「軌道に乗ったら奴らの誕生の地に行くよ」

売込「本気か?」

デブ「本気さ。奴らの誕生の地はおおよそ見当はついてる」

売込「まあ、俺は別のものを売りに回るとするか」

デブ「世話になったな」

売込「じゃあな」


説得

和室の執務室にて

デブ「将軍、これはチャンスとお考えになられては?」

将軍「なんとな?」

デブ「私のプランが通ったとしても今のサプライチェーンではこの範囲に押し込められます」

将軍「ん?この地図では防衛範囲に首都”京”が、首都が入っていないではないか」

デブ「首都はあいにく防衛に最も適さない地形なので放棄します」

将軍「それではゲートが閉じて住民が逃げてしまうではないか!」

デブ「将軍。あなたはこの地に何をしに来られたのですか?」

将軍「かつて地球に有ったという平和の国、日本の復興よ」

「それを今、この儂に問うか?この撤退の瀬戸際と言うのに」

デブ「確かに首都を放棄した時、大半の住人にはこの星は見捨てられ、検疫によりゲートは閉じられるでしょう。しかし、恒星間ゲートが閉じる。これは外界からの干渉をなくす事でも有るのです」

将軍「・・・・鎖国と申すか」

デブ「・・・私のプランでは”防衛”は出来るのです」

将軍「成る程持ち出せるものは守れると言うのだな?しかし領土の大半はカイジュウ共に明け渡せとな?」

デブ「ですから、私めのプラン、”里”であれば、時間はかかりますが惑星全土から奴らを駆逐出来ます。私のプランを取らないのであれば・・・・」

将軍「儂は地位を捨て、星とともに夢も消えると申すか」

「よかろう。”里”を作るまでにどれだけ時間を稼げばよいか?」

デブ「将軍・・・」

将軍「儂の役目じゃ。色々約束をしてきたのでな。で、どうなのじゃ」

デブ「最初の5人が仕上がる2ヶ月、それから半年あれば」

将軍「努力しようぞ」


籠城戦

プロジェクト”里”の実行計画が承認されてより、2ヶ月後 最後に残された里近隣にある軌道エレベーター基部。

元役人「上様、申し訳ありません」

将軍「お前にも人生が有るだろう。よくここまで付き合おうてくれた」

将校「上様、奉行より入電!”長篠はもう持たず”とのことです」

将軍「行け、ゲートは直に閉まる通告が来る」

「おい奉行達に伝えろ、”籠城戦の準備に入れ”とな」


ドックから5体の巨体が這い出してくる。

レディ「あら、イモい感じね。いいのよ、これからの仕事は本当に害虫駆除なんだから。泥臭いにも程が有るわ」

新人「先輩、アイツラを今すぐ殺らせてください」

レディ「ええ、幸いなことにこれから次の新人が入ってくるまで24時間休み無く、それは出来るわ。でも、軍人だもの指示には従って頂戴」


カイジュウ、というよりその取り巻きを粉砕するべく砲撃が響き渡る前線。

指示役「撃ち方、辞め!女神が来るぞ!」

うぉぉぉぉぉ!(歓声)

後光を背負った美女が前線を優雅に跨いでいく。 そして一閃

兵「すげぇ、バターみたいに切り刻んでる」

兵「槍の先端はどれぐらい速度が出てるんだ?」

兵「直射砲の数倍は出てる。なんなんだあの槍は!?」

兵「衝撃波だ、くるぞ!」


砲撃の音がかすかに響く、会議室。

奉行「レディ、もとい何と呼びましょうかな?」

老中「女神では軍が使役するには相応しくないな」

将軍「カンムスではどうじゃ」

奉行「聞き覚えのない単語ですな」

将軍「艦娘じゃ。一世を風靡したという文化の香りじゃよ」

老中「あの外観、大きさだ都合がいい。カンムスでいいな」

奉行「して、カンムス5名により前線が一時的に安定を見ましたが、偵察によると敵の増援が続いているとのこと」

老中「国庫も空だ。打てる手は打った。しばらくは耐えるしか手はない。」

将軍「やはり、ここも持たぬか」

奉行「残念ながら、もうこれ以上は難しいかと、もって3日」

将軍「データの移送はどうなのじゃ?」

老中「もう”里”にほぼ運び終えとる」

奉行「将軍もご承知でしょうが、わが軍も有志が残っているだけです。兵の家族も脱出が進んでおり、脱走者も相次いおりまして、その…」

将軍「この状況で責めるのは酷じゃ。どう見ても負け戦じゃからな。」

老中「上様、もしや」

将軍「儂は心中などせんぞ。ここで生き残ってみせるのじゃ。それよりも脱出せぬ民はどうなっておる?」

奉行「貧民や保護者の居ない子供ですな。なんとか救出し、”里”へ集めております」

将軍「ならよい、彼らは今後必要な国民じゃ。人が居らねば奴らを駆逐したとしても乗っ取られかねん」

老中「かと言って不埒な輩が他の星系からやって来ないとも言えぬがな」

将軍「奴らを前に我らが奮闘している間は大丈夫じゃ、何よりカンムスもおるではないか」


”里”と呼ばれるカンムス、70m巨人族の量産所

謎「目が覚めたかしら?体の調子はどう?」

X「大丈夫です」

謎「ここは仮想空間ではないわ。現実よ?さ、体を起こして」

X「重い…」

謎「そうね、ジェネレーターの接続を終われば軽くなるわ」

X「状況は?」

謎「ゲートは閉じられたわ」

X「そう」

謎「でも残ってる国民たちには私達が希望なの、さあ立ち上がって」


里の煤けたプレハブ小屋で執務に当たる3人。他に人影は見当たらない。

将軍「エネルギー供給は十分だな」

奉行「軌道エレベーターの防衛も成功しました。最後の大枚を叩いて購入したジェネレーターを動かす分には十分です」

老中「こうして働いてると昔を思い出しますなぁ」

将軍「もうマトモなバックヤードは儂らぐらいじゃしな。」

奉行「救出した居留民に今各種職業訓練をしてますがまだ時間が」

将軍「よいよい、幸い戦線は安定した。」


”里”のラボにて今後の予定を話す将軍とデブ

デブ「最終的には週7名のカンムス配備が目標です」

将軍「そんなにか!?ジェネレーターの数は足りんぞ?」

デブ「カンムス単体でも一定時間は高機動が可能です。」

将軍「ならよいが、そんなに配備してどうする?」

デブ「彼女らは全土に配備し、怪獣の駆逐に従事してもらいます」

将軍「そうか、戦線を押し上げるだけでは駆除は完全ではないと」

デブ「ええ、特効薬を開発するまではこの種族の駆除は難しいでしょう。」

将軍「なるどあのカイジュウどもさえ駆逐できれば対処は容易いと」

デブ「まだ問題はあります。菌糸として広がる奴らの基礎です。これには改造生物を当てます」

うねうねと触手を頭につけた犬サイズの何かがやってくる。

将軍「なんぞ、この犬のような化物は」

デブ「彼らが食べて回ります」

将軍「奴らを食べるとな?」

デブ「最終的にカイジュウを生み出す菌糸から小型の動物まで、彼らが根こそぎ食べてしまいます。実はこの改造生物は奴らと地球型生命体のハイブリッドです」

将軍「そんなことして大丈夫なのか?」

デブ「人類の品種改良とさして差はないですよ。変異してもあのカイジュウにたどり着く前に駆除は終わります。彼らが食べ終われば、本当に駆除が終わり、再び入植できるようになります。」

将軍「ならば仕方ないの」


TV「漸く、半年の上洛作戦を完遂し我らが首都、京が解放されました!カンムス達の勇姿をご覧ください!」

TVを眺めつつ、小規模亜空間ゲートを介して電話をするデブ

売込「無理だとさ。同盟は少なくとも100年はそっちの星系の恒星間世界に接続を禁止する評定を出した」

デブ「そうか、だがこちらは計画通りだ」

売込「欲しい物が有ったら言いなツケといてやる」

デブ「ゲートも回線しか無いのにどうするんだい。将軍もこれ幸いと建国に励んでるよ」

売込「金さえ積んでくれれば、探査船で密輸だってするぜ?まあ、その調子じゃお呼びじゃないようだな」

デブ「僕もそろそろレディと次の場所に行こうと思っててね」

売込「売込先が見つかったら声かけてくれよ」


荒れ果てた首都の執務室に集まる3人。

将軍「残った人口は1500人足らずか」

老中「カンムスによって土地が開放されても住む人間が全く足らんな」

奉行「血の濃さ、遺伝子プール上は問題はありません。食料も暫くは軌道上からのエネルギーでまかなえます」

将軍「不老不死の技術も失われてしもうたから次世代をなんとかせねばな」

老中「ここが踏ん張り処じゃて」


出立

オービタルリングと軌道エレベーターの先に有る、静止衛星軌道上のステーション。

将軍「行ってしまうのか?」

デブ「私はここで自身のプラン実証が出来たことを感謝します」

将軍「儂も生き残る僥倖じゃった」

レディ「調査船の出港時間よ」

デブ「それでは彼らの故郷を探しに行きます」

将軍「もう会うことはないだろうが達者でな」

デブ「将軍も。では」

見送りに二列に並び、整列敬礼する8名のカンムス。 そしてレディの手に載って敬礼するデブ


ここは調査船内部。

売込「で?金は持ってきたか?」

デブ「奴らの遺伝情報と反応系データだ。どうだ?」

売込「いいだろう。でも事実上の漏洩だな」

デブ「敵を知り、己を知れば百戦危うからずだよ」

売込「ちがいない。で、行き先は分かってるのか?」

タブレットを出すデブ

デブ「だいたいこの辺りだな」

売込「あいよ。金はもらったからな。行くぜ。」

使い捨てワープゲートを展開し、出立する深宇宙調査船


そうして、星の海にデブは消えたのさ この70m巨人族とその眷属、妖精さんと何処にでも居るしがない人類を残して