電源@200円

彼は我が家に着たときからすでにお古だった。
初めて見たのは空港近くのあぷあぷ。ジャンクの通例よろしく雑多なプラスチックの箱に同じやつらがたくさん芋のように放り込まれていた。あのとき中から見てくれが良さそうなのを選んだような記憶がある。それが彼だった。

彼は元々がやすい半島産の計算機に付いていたものだったがそれがあの当時すでに「無保証」「返品不可」なんて張り紙がした状態だった。その頃はまだOldMacの箱にいろいろ詰め込むことに情熱を燃やしていたので小さいものは保優先順位の高い代物だった。なのでとりあえず確保することになった。

その値札の200円を払い彼を引き取った。しばらくは予備役としてテストなんかに役立ってもらっていたのだが本当は前線で働いてほしいと考えていた。が如何せん彼は古くておまけに安い半島産用だったので力量もそれなり。うなるAthlon級の前では前線配備など出来ない相談だった。

それから数年、仕事をについたときもいつかはと彼を引越先に持っていった。
ある時常時稼働のサーバーが欲しくなった。そこでノート用のCPUにiMac用ドライブなど買い揃え一台仕立て上げるとことになった。いろいろ試した結果ちょうど良いサイズとファンがついているということで彼にようやく白羽の矢がたった。そして電源兼、冷却装置(シンクはファンレスなので唯一のファン)として働いてもらうことにした。

彼の評判は上々で我が家に来た数少ない客人も彼の働きに「静かだね」と賞賛の声を掛けてくれたものだった。

あれから何年たっただろう。HDDを2台足したりメモリを1枚足したりカードを1枚追加したり負荷が増えても何事もなくいつも働いてくれていた。
だがその時が来た。彼は働けなくなってしまった。

あれはうちにきた客人がTVは見ないからと言った。ので邪魔だろうとTVも兼ねるそのサーバーを止めてしまったときだ。翌日、起動しようとしたがOSの起動直前で落ちてしまう。それから何度やってもダメだった。コードを替え、パーツをはずし、すべてが無駄だった。

ああ、ご苦労様、約7年間ありがとう。200円の値札以上によく頑張ってくれたよ。

そうしてこの前、その彼を他のものと交代してもらった。新人君は国産メーカーに付いていたやつだが音がうるさいのが玉に瑕だ。

試しに彼の中を覗いてみた。そこには数年間に渡って溜め込んだすさまじいばかりのホコリがつまっていた。
それをベランダに出て吹き飛ばす。
と意外に綺麗だ。Gの形跡はあったが外傷は見当たらない。じゃあコンデンサの容量抜けか?でももしかするとまだ活躍できるかもしれない。
そう思い、彼は次の活躍を待ってパーツ集積所で休んでもらうことにしたのだった。