目標は絵本チックに締めたいのである。 むかしむかし、ある所に誰も住んでいない星が有りました。 そこに星間ゲートウェイを開設してやってくるは若き日の将軍様。的な
絵本「カンムス年代記」
1P
「むかしむかし、ある所に誰も住んでいない星が有りました。そこに星間ゲートウェイを開設して最初にやってきたのは若き殿様でした。」
「星間ゲートウェイって何?」
「トンネルみたいなもの?よくわかんなや」
「それが有るとどうなるの?」
「はるか遠くの星と行き来が出来るのよ」
「今はそれはないの?」
「うーんカイジュウが暴れまわったから、向こう側の人達が怖がって閉じちゃったわ」
「こっちから開けないの?」
「それはまだ、いろいろ準備が必要だから先の話だねー」
「ふーん」
「じゃあ、続けるね。殿様は仲間たちと日本を再興を考えて居ました」
「日本って何?」
「質問が多いわね、今のこの仮想空間みたいな国かな。」
「へー。ここ日本なんだ」
「って事になってるわね。じゃあ続けましょうか。」
2P
「殿様はこの星を八千代と名付けられ人が住めるように改造しました。」
「それでここ八千代って言うんだ!」
「そうね、」 「八千代って名前はこの星がずーっと長く続きますようにってね。でも、人が住めるように星を改造するのにお金かけすぎてとっても貧乏だったのでした。」
「どれぐらい貧乏だったの?」
「どれぐらい貧乏かと言うと、毎日ご飯が食べられないぐらいでした。」
「うわぁ」
「あ、ご飯ってお米ね。」 「それでも殿様は日本を再興するためコツコツ頑張って開拓をしていました。」 「でもそこにカイジュウの方舟がやってきたのです」
「なんで方舟なの?」
「カイジュウの方舟は、カイジュウの星から打ち上げられて八千代を狙ってやってきたのでした。そして中にはカイジュウ以外のいろんなカイジュウの星の種族の種も一杯入っていたのでした。」
「え?カイジュウの種もあるの」
「あるわよ。今度、博物館に見に行こうね。」
「へー、カイジュウの赤ちゃん見たい」
「それは駄目。先祖がどれだけ苦労したことか、あなたも大きくなって任地に行けば分かるわ」
「ふーん。」
「はいはい続きね。」 「方舟の中の種は育ちカイジュウがいっぱい現れました。けれども殿様の兵隊たちはカイジュウをやっつけることはできませんでした。」
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「小さな人間の武器は大きなカイジュウに殆ど効かないので、兵隊も逃げ出す有様でした。これを見た殿様はこのままカイジュウ達に八千代を取られちゃうと困ってしまいました。」
「取られてないけどね」
「ほら黙って。」 「そこへ殿様に助け船が現れました。口の達者な怪しい商人です。なんでも安くカイジュウを退治出来ると言うのです。」
「でも、殿様はこのような商人にはうんざりしてました。なにより元々貧乏だったので本物の強い武器は買えなかったのです。寄ってくる商人風の者は詐欺ばかりでした。」
「さぎってあの白い鳥?」
「違う違う、嘘付いて騙す人のことよ。」
「なーんだ悪い人じゃん」
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「殿様は商人の言う品は禁断の黒魔術、自動マイクロマシンかと疑いました。」 「黒魔術は勝手に武器が生えて来る魔術も使えるのです。そんなことはみんな分かってました。でも黒魔術は星間政府によって禁止されていたのです。」
「そんなに便利なら使えばいいのに」
「禁止にはある事件がありました。その昔、ある星で黒魔術が使われました。でも黒魔術は勝手に武器を作って人々を奴隷にしてしまったのです。」
「どれい?」
「奴隷は人々が鎖に繋がれて自由が無くなる事なの。」 「それを知った星間政府は黒魔術ごと星を太陽に落とす事に決めて、そして実行してしまいました。それしか黒魔術を止める方法がなかったのです。」
「黒魔術怖い」
「大丈夫よ、ここには無いわ。」
「殿様は商人に聞きました。売る品は黒魔術じゃないのかねと。」 「商人は言いました。いいえ、黒魔術なんかじゃありません、ちょっと人間のサイズを変えるだけですと」
「それがカンムス?」
「そうね。でも殿様は信じませんでした。そんなうまい話が有るわけがないと。」 「そこで商人は本物を見せるために博士と私達の大先輩であるレディを呼んだのです。」
「そっから知ってる!」
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「軌道上から舞い降りたレディとその手に乗った博士は殿様の眼の前で軽やかにカイジュウを三枚おろしにしてみせました。」
「三枚おろしだ!」
「それを見た殿様は感激して、この巨人を大きな船のような娘、カンムスと名づけて、作ることにしたのです。」
「私達って作られてるの?」
「そうねぇ。でも私達はみんな、殿様や博士もレディと同じ人間よ」
「ふーん」(納得行かない顔)
「殿様はなけなしのお金を使って5人の勇者をカンムスに転生させました。5人だったのは反乱を恐れたからでした。」
「反乱って?」
「殿様の言うこと聞かない、殿様より偉い!って乗っ取ることよ」
「殿様悪い人なの?」
「いいえ、違うわ。」 「それはカンムスがカイジュウよりとっても強いので怖くなったからでした。」
「でも博士は困りました。たった5人じゃカイジュウを全部退治できないのです。衛星写真から5人のカンムスが退治するより多くカイジュウが別の大陸からどんどんやって来てしまうことが分かったからでした。」
「どうしたらいいの?」
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「そこで博士は殿様に言いました。もうカンムスを生産拠点”里”を作ってカイジュウよりいっぱい作っちゃいましょうと。」 「殿様は驚きました。」 「貧乏な殿様はそんなお金はもう無いと思ったのです。でも博士は全部の財産を捨てればそれは出来ますと言いました。」
「全部捨てちゃうの?」
「全部の財産をカンムスの里、今のここを作る事に使ったらという意味ね。その辺に捨てるわけじゃないのよ。」
「それでここ出来たんだ!」
「殿様は初め決心が付きませんでした。そのころ星間ゲートの向こう側は違う理由で困っていました。カイジュウが星間ゲートウェイを通ってやってきたらどうしようかと。」
「カイジュウそんなに強いの?」
「カイジュウはそこまで強くはないの。」 「なぜならカイジュウを調べたところ、カイジュウの細胞がやってきたら地球の生物は負けてしまうことが分かったのです。」
「でもここには人間も居るよ。みんな同じ人間なんでしょ?」
「一緒にしたらダメなの。ここには監視員サンも居るでしょ。私達と彼らが居ないと地球から来た生き物はカイジュウに負けて殺されてしまうのよ。」
「カイジュウ実はそんなに強いんだ」
「そうよ。」 「そこでゲートウェイの向こうでは、カイジュウに負けた土地から人が来たら、体の隅々まで消毒、体を作り変え無い限りゲートウェイの通過は出来ないようしました。もし殿様が負ると分かったらゲートウェイを閉じる事に決めてしまいました。」
「どうなったの?」
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「殿様は決心しました。」 「殿様は日本を復興しようと八千代にやってきたのでしたから、ここで逃げずに戦えるのならば戦って見せようと。」 「でも、それは暫くの間、首都”京”をカイジュウに渡してしまう事でもありました。」
「それじゃ」
「そうね、心配してることが起こっちゃったわ」 「首都”京”の中にカイジュウが突進する姿を見たゲートウェイの向こう側の人々は殿様がもう勝てないと確信しました。そう、”京”でカイジュウが暴れまわったその時、ゲートウェイは閉じられたのです。」
「もちろん、殿様は負けるつもりはありません。暫く防戦のあと、博士と作った里からカンムスが続々と転生して来るとカイジュウを”京”から追い払うことが出来たのでした。」
「やったぁ」
「その後もカンムスは次々生まれて八千代の隅々まで広がっていきました。そのカンムスの居る場所を任地と今では言いいます。」
「殿様と博士は今どうしてるの?」
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「その後20年ほど経って、殿様はこの八千代でカイジュウ退治が順調なのを見届けると息を引き取りました。」
「死んじゃったんだ」
「そうね、始まりが有れば終わりも有るのなのよ」
「博士は?レディは?」
「博士とレディは記録に寄ると里が順調に動き出したら旅立っていきましたって有るわね」
「なんでもカイジュウの生まれ故郷を探しに行ったんだって。」
「博士とレディは帰ってくるかな?」
「そうねぇ、100年以上も昔の出来事だからもうわからないわね。」
「ちぇー」
「じゃあ、もう寝なさい」
「はーい。でもお歌歌って」
「いいわよ」
--終わり--